大規模ネットワークシステムのクラスタ低次元化
近年、ネットワーク科学の分野では、グラフ理論や統計理論に基づいて現実の世界に存在する様々なネットワークの解析が行われており、スモールワールド性や次数分布のべき則などに代表される普遍的な特性が見出されています。 このネットワーク解析における研究課題のひとつに「コミュニティ検出」と呼ばれるものがあります。 コミュニティ検出問題とは、与えられたネットワークをいくつかの部分ネットワーク(コミュニティ)に分割する問題であり、 人間関係のネットワークにおけるグループの検出問題などが代表的です。これは対象とするネットワークをクラスタ化する問題と解釈することもできます。
本研究では、このコミュニティ検出問題に対して制御理論的なアプローチを試みています。 より具体的には,ネットワークを構成するノードに対して状態変数を設定し、状態の入力信号に対する振る舞いの類似度という観点からノードの集合を分類(データクラスタリング)することを考えます。 結果として、図に示されるように、ネットワーク内に含まれる「良く似たノード」が検出され、入力状態写像に関して本質的な寄与をもつエッジの集合が可視化されます。 さらに、構成されたクラスタに対して集約化された低次元の状態変数を与えることにより、クラスタ間のネットワーク構造を保存した低次元化(クラスタ低次元化)が実現されます。得られた集約モデルの各状態は、もとのネットワークシステムの各クラスタの平均値の振る舞いを近似しています。