小型原子時計をネットワーク化する分散型高精度時刻同期技術を研究しています

私たちの現代生活に不可欠な日本標準時(JST: Japan Standard Time)は、国立の研究機関である情報通信研究機構(NICT)が生成して日本各地に供給しています。日本標準時は、水素メーザ原子時計やセシウムビーム型原子時計、光格子時計などの高精度な原子時計を20台ほど集約化することによって生成されます。現在の原子時計は大型であるため持ち運びはできませんが、2030年を過ぎた頃の近未来にはスマートフォンなどのモバイル端末に安価で小型な原子時計チップを搭載することが想定されています。

本研究室では、NICTや群馬大学との共同研究プロジェクトとして、原子時計チップの普及を見据えた分散型時刻同期技術の研究開発を行っています。この研究プロジェクトでは、先端的なシステム制御理論を駆使することによって、時々刻々とネットワーク構造が変化する原子時計群に対して超高精度な時刻同期を達成する分散アルゴリズムを開発します。具体的には

などに取り組んでいます。これらの研究開発には、分散協調制御確率システムカルマンフィルタ最尤推定信号処理機械学習イベントトリガー制御などのシステム制御分野の幅広い技術や知見の統合が不可欠です。

本研究グループが開発する分散型時刻同期アルゴリズムは、NICTが所有する総合テストベッド環境(StarBED)を用いたエミュレーションによって有効性を検証した後で、セイコーソリューションズやレイドリクスが開発する原子時計チップ搭載の有無線モジュールに実機実装を目指す計画となっています。モバイル原子時計ネットワークによる超高精度な時刻同期は、Beyond 5Gを実現する基礎にも位置づけられています。展開領域はスマートグリッド金融取引放送自動運転など多岐に渡ります。本研究開発を通して、未来の高度情報通信社会にシステム制御理論で貢献することを目指します

(参考情報)

総務省:周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発  [⎋ 総務省]

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定員に達したためポスドク等の募集を締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。

研究成果

原子時計の多様な時刻ゆらぎを評価する数学的基礎を構築 〜次世代無線通信Beyond 5G/6Gに不可欠な高精度時刻同期に貢献〜

東工大ニュース(2023.12.20)T. Ishizaki, T. Ichimura, T. Kawaguchi, Y. Yano, Y. Hanado: Higher-Order Allan Variance for Atomic Clocks of Arbitrary Order: Mathematical Foundation. Metrologia, 60(1), 2024 の研究成果について解説しています。[⎋]

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