再エネ主力化に向けた市場主導型電力系統制御の数理を研究しています
2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて「S+3E」すなわち、Safety(安全性)、Energy Security(エネルギー安定供給)、Economic Efficiency(経済効率性)、Environment(環境適合)を同時に達成しながら再エネの導入をさらに拡大することを目指しています。一方で、現在の電力系統運用は、火力や原子力などの従来型発電を前提にして設計されているため、天候によって不確かに変動する再エネの特性を適切に考慮できているとは言えません。
本研究室では、システム制御の数理学を駆使して、再エネ主力化を見据えた系統安定性と経済性を両立する市場主導型制御について研究しています。具体的には
再エネ不確かさを考慮した大規模蓄発電計画の機械学習に基づく高速化
火力・原子力発電と併せて再エネと蓄エネを経済評価するリアルタイム市場メカニズムの解析と設計
力学的エネルギー消散性に基づく同期発電機群とグリッドフォーミングインバータ機器群の市場主導型制御
計画と運用の統合型シミュレーション環境構築に向けたGUILDAの拡張
などに取り組んでいます。これらの研究開発には、分散協調制御、数理最適化、時系列予測、メカニズムデザイン、機械学習、モデル予測制御などの幅広い技術や知見の統合が不可欠です。
本プロジェクトでは、経済産業省の資源エネルギー庁とも連携して「日本版コネクト&マネージ」に関する制度設計を議論していきます。本研究開発を通じて、システム制御数理の立場からスマートグリッドのあるべき未来像を提示することを目指します。
(参考情報)
『電源の統合コスト低減に向けた新たな研究開発・調査に着手―電力システムの柔軟性確保・最適化によるS+3Eの同時達成を目指す―』 [⎋ NEDO]
『知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?』[⎋ METI Journal ONLINE]
『電力ネットワーク利用の改革〜日本版コネクト&マネージ他』[⎋ OCCTO]
NEDO:電源の統合コスト低減に向けた電力システムの柔軟性確保・最適化のための技術開発事業 研究開発項目2 [⎋ NEDO]
研究開発課題:再エネ主力化を見据えた系統安定性と経済性を両立する市場主導型制御機構の数理的研究(2024.06-2027.03)
研究機関:三菱総合研究所、送配電システムズ、日立製作所、電力中央研究所、テプコシステムズ、横浜国立大学 、東京工業大学