レトロフィット制御に基づく制御系のモジュラデザイン理論の構築
レトロフィット制御とは、多数の主体によって増改築されていく大規模なネットワークシステムに対して、局所的なサブシステムモデルのみを用いたコントローラの設計と実装により大域的なシステム特性や制御性能の改善を目指す、新しい考え方の制御理論です。 レトロフィット制御では、従来のロバスト制御とは異なり、注目するサブシステムとのフィードバック系が安定である任意の環境(注目するサブシステム以外の未知なサブシステム群)に対して、注目するサブシステムモデルのみを用いて設計された局所コントローラにより制御系全体の安定性の保証と制御性能の向上を考えます。 これにより、多数の独立した主体(サブシステム管理者)が制御系の不安定化を危惧することなく、自身が管轄するサブシステムに対して局所コントローラを自由に導入・取替・撤去することが可能となります。 これは、分散制御系のモジュラデザインに対する有用なアプローチのひとつとなることを意味しています。
これまでの成果として、具体的なコントローラ設計手法の構築に加えて、Youlaパラメトリゼーションをもとに、すべてのレトロフィットコントローラの特徴付けを与えることに成功しています。 また、複数のレトロフィットコントローラが同時並行的に設計および実装された場合のシステム特性や制御性能の解析を行っています。 さらに、局所的に計測可能なデータから未知で可変な環境の近似モデルを同定し、その同定された近似モデルをレトロフィットコントローラに可変なパラメータとして組み込むことによって、さらなる制御性能の向上が図れることを理論的に示しました。 同定された近似モデルの安定性や入出力特性に依らずシステムの安定性を常に保証することができるため、オンラインでの未知の環境の同定(学習)などと相性が良い制御手法となっています。