不確かな太陽光発電予測に基づく蓄発電運用計画と最小予備力解析

太陽光発電は温室効果ガスを排出しないクリーンな電源である一方で、天候の変化などの影響で発電量が大きく変動するため、電力系統全体の需給バランスの維持が難しくなります。 この需給のアンバランスによる停電などの重大な事故を防ぐためには、太陽光発電量の過不足を蓄電設備により補うことに加えて、気象観測データなどに基づき太陽光発電量の予測を行い、その電力不足の予測に応じて従来型の火力発電設備を効率的に運用することが不可欠です。 しかしながら、太陽光発電予測にはしばしば大きな誤差が伴うため、予測誤差を陽に考慮した新しい電力系統需給制御技術の開発が望まれていました

本研究では、前日の太陽光発電予測(図1)に基づいて火力発電機と蓄電池の運用を計画する問題を、蓄発電コストを需給バランスを維持しながら最小化する最適化問題として定式化しています。 特に、予測誤差を伴う正味の需要電力予測量は、図の赤い領域で示されるような信頼度付きの予測区間において変動するパラメータとして表現しています。 ここで注意すべき点は、図中の青と緑の領域に示されるように、正味需要電力予測量の変動に依存して、最適化問題の解として得られる最適な蓄発電量計画も同時に変動することで。 このとき、最適運用計画の上限軌道と下限軌道(青と緑の領域の境界)を求めることは、太陽光発電量の予測誤差を考慮したロバストな需給バランスの実現に向けて、最低限必要な火力発電機や蓄電池の予備力を知るために重要な情報となります。 本研究では、区間解析手法に基づき変動パラメータに関する最適解の単調性を解析することによって、上限軌道と下限軌道の効率的な計算法を提案しています

図1:太陽光発電の信頼度付区間予測

図2:太陽光発電の信頼度付区間予測に基づく火力発電機と蓄電池の最適運用計画

再生可能エネルギーの不確かさを考慮したロバストな発電機起動停止計画

火力発電機の起動と停止には数時間程度の準備運転などが必要であり、瞬時に電力供給を開始・中断することができません。 したがって、変動する電力需要や再エネ発電に合わせて需給バランスを維持するためには、それらの電力を適切に予測した上で、需要変動などに応じてリアルタイムに調整可能な発電機群の起動停止時刻を前日までに計画しておく必要があります。 しかしながら、再エネは天候の変化などにより発電量が大きく変動するため、前日に発電量を正確に予測することが困難です。 また、再エネの発電量は、従来型の火力発電機のように発電量を電力需要に合わせてリアルタイムに調整することができないことも大きな課題となります。 このような背景から、再エネを有効活用しながらも安定した電力供給を実現するためには、発電機や蓄電池を用いたロバストな運用計画手法の開発が必要となっています

本研究では、再エネを有効活用しながらも安定した電力供給を実現する新たなロバスト起動停止計画法を提案しています。 具体的には、前日の段階における発電機の起動停止計画に対して、運用当日の各時刻でリアルタイムに調整ができる蓄発電量の範囲も同時に求める新たなロバスト最適化問題を定式化し、その効率的な解法を構築しました。 本手法により、当日の運用では、当該時刻における正味電力需要の実測値とバランスをとるように、調整許容範囲内でリアルタイムに蓄発電量を調整するだけで、その時刻以降の不確かな正味電力需要に対しても安定供給を実現する蓄発電運用が可能であることが保証されます

代表的な論文(プレプリント版)

cho2021three.pdf

IEEE Transactions on Industrial Informatics (2021)

DOI: 10.1109/TII.2021.3079364

koike2020optimal.pdf

IEEE Control Systems Letters (2020)

DOI: 10.1109/LCSYS.2019.2921953

cho2019box.pdf

IEEE Transactions on Power Systems (2019)

DOI: 10.1109/TPWRS.2019.2896349

東工大ニュース [Link]

koike2018optimal.pdf

Control Engineering Practice (2018)

DOI: 10.1016/j.conengprac.2018.05.008

ishizaki2015interval.pdf

Automatica (2016)

DOI: 10.1016/j.automatica.2015.11.002

科学技術振興機構報(JST)[Link]

sadamoto2015spatiotemporally.pdf

IEEE Transactions on Smart Grid (2015)

DOI: 10.1109/TSG.2014.2377241